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キョンキョン様リクエスト
京介×圭志、裏可の嫉妬






「ただいま」

ガチャリとリビングの扉が開き、圭志が入って来る。

「おぅ、遅かったな」

それをソファに座って寛いでいた京介の声が迎えた。

「あぁ、もっと早く帰ってくるつもりだったのにジジィ共が…」

ぶつくさ文句を垂れる圭志を手招きし、疲れた様子で近付いて来た圭志の腕を引く。

抵抗もなく膝を折った圭志を抱き締めてやれば、余程疲れていたのか圭志の方から擦り寄ってきて、腕が背中に回された。

「ん…?」

と、同時に圭志には似合わない甘ったるい香水の匂いが鼻についた。

「圭志」

「なに」

圭志を疑うわけじゃねぇが、他人の匂いをつけてくるとは。

「風呂入ってこい」

「…面倒臭いな」

「それなら俺が洗ってやる。とにかくその匂い、落としてこい」

圭志を抱き締めていた腕を解き、圭志を立たせると、その手をつかんでバスルームに向かう。

「匂い?…あぁ、側にいた奴が…」

香水の匂いに長時間あてられていたせいか、圭志の鼻は麻痺してしまっていて、言われるまで気付かなかった。

そして、バスルームに連れて行かれるなり、上着を脱がされ、ネクタイを引き抜かれる。

「ちょっ、京介。自分でやるから」

シャツのボタンにかかった京介の手に、圭志は右手を重ねて止めに入った。

シャツを自分で脱ぎ、上半身裸になるとベルトに手をかける。

カチャとバックルを外し、圭志は隣から感じる視線にふと顔を上げた。

「…どうした?」

京介の前で脱ぐことは別段恥ずかしいとは思わない。だが、そんなにジッと見られるとさすがに気になってくる。

「京介?」

すると、黙ったまま京介の右手が伸びてきて無防備にさらされた圭志の首筋に触れてきた。

「―っ」

「消えかけてるな」

するりと首筋を這う指に圭志は小さく体を震わせる。

圭志の肌に薄く色づく華に、京介はフッと瞳を細め、距離を縮めた。

「んっ…ぁ―…待てっ、京介」

首筋に触れる吐息と、押し付けられた唇に圭志の背が震える。じゅっと皮膚を吸われる感覚に、圭志の口から艶ややかな声が漏れた。

「…んっ…風呂に、入るんじゃねぇのかよ」

「あぁ、そうだったな」

くんと鼻を鳴らした京介は眉を寄せ、あっさりと圭志を解放し、自分も服を脱ぎ始める。

離れた京介にほっと息を吐きつつも、圭志は京介のつけた真新しい痕に指先でそっと触れ、口元を緩めた。

シャワーのコックを捻り、ちょうど良い温度に設定されたお湯を出すと圭志は頭からお湯を被る。

「ふぅ…」

張り付いた前髪を右手で掻き上げ、後ろへ撫で付けると心持ちさっぱりした気がして息が漏れた。

「圭志」

そんな圭志の後ろから京介の腕が伸びてきて、圭志の肢体に絡み付く。

サァー、と降り注ぐシャワーが京介を濡らす。背後から腰を抱かれた圭志は京介の腕の中へと抱き込まれ、やんわりと耳朶を噛まれた。

「っ―…」

腰に回された手とは別の手が圭志の胸を這う。

「付き合いだって分かっちゃいるが、匂いを付けるほど近寄らせるな」

「んっ…俺は別に…」

低い、甘い声音が流し込まれ、ぴちゃりと耳の輪郭に添って舌が這う。

「いいな?」

「は…、っ…」

「圭」

「分かっ…気を付ける」

熱を帯び始めた吐息と共に、圭志は頷く。先程の甘ったるい匂いは完全に消え失せ、圭志は京介の熱に包まれる。

「…約束通り洗ってやるよ」

ふっと耳元で妖しく笑った京介の右手が、腰から下へと下りてきた。

「っ―…ばっ、どこ触って…!っ、きょう…!」

「疲れてんだろ?全部俺に任せとけ」

「ん、…ぁっ―…」

ふるりと京介の腕の中で圭志は体を震わせ、上から降り注ぐお湯よりも体を熱くさせていった。





ふわりと身に馴染んだ香りが鼻腔を擽る。特別、香水を付けているわけでもないのに香る匂いに、圭志は瞳を細めた。

「ん……」

ソファに身を沈めた圭志の髪を、隣に座った京介がタオルで拭く。

「寝てもいいぜ。後で運んでやる」

「や…、大丈夫…」

本当はこのまま眠ってしまいたいほど疲れてはいたが、このまま寝てしまうのも勿体無くて、もう暫く京介に甘やかされていたいと、圭志は閉じそうになる瞼に逆らった。

「そうか。何か飲むか?次いでに持ってきてやるぜ」

粗方髪から水気をとり終えると、京介はタオルを手にソファから立ち上がる。

「じゃぁ、コーヒー」

「分かった。少し待ってろ」

離れていく京介を目で追い、圭志は表情を緩めた。

「…京」

ちらりと覗いた独占欲が嬉しい。そう感じる自分は相当京介に嵌まってると思う。

「ほら」

言葉通りコーヒーを淹れて来てくれた京介からカップを受け取り、隣に座った京介に寄り掛かる。

「京介」

「ん?」

横から視線を感じながら圭志はカップに口付け、平等な約束を求めた。

「お前も俺以外の奴の匂い付けてくんなよ」

「ふっ、無用な心配だな」

緩んだ空気と視線が、返ってきた返事が自信満々で、圭志もゆるりと口元を緩める。

そして、するりと肩に回された京介の腕に圭志は心地好さげに身を任せたのだった。



end.


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